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日本のDXが遅れている理由は、技術不足ではなく「翻訳できる人材」の不足だ
JTC並びに中小企業で、6年間DXを推進してきた。
その中で強く感じるのは、日本企業のDXが遅れている理由は、単に「ITに弱いから」ではないということだ。 むしろ問題は、もっと根深い。技術はある。ツールもある。
AIも、SaaSも、ノーコードも、クラウドも、以前とは比べものにならないほど使いやすくなった。 それでも現場は変わらない。 なぜか。 技術を「業務の変革」に翻訳できる人が、圧倒的に少ないからだ。
DXは、パソコンを使うことではない
まず、DXという言葉はかなり雑に使われている。 紙をExcelにした。 Excelをクラウドに置いた。 会議をオンラインにした。 申請をフォームにした。 もちろん、それ自体に意味はある。だが、それは多くの場合「デジタル化」であって、まだDXではない。 DXは、単なる作業の置き換えではない。 本来は、これまで人間ではできなかったことを可能にしたり、人間よりも高い精度・速度で判断できるようにしたり、業務そのものの流れを変えることだと思っている。 つまりDXとは、ツール導入ではなく、変革のプロセスである。
現場と技術の間に、深い溝がある
DXの現場で一番難しいのは、技術そのものではない。 難しいのは、現場の課題と技術を結びつけることだ。 現場は「何に困っているか」を業務の言葉で話す。 エンジニアやIT担当者は「何ができるか」を技術の言葉で話す。 経営者は「いくら儲かるのか」「何が改善するのか」という投資の言葉で判断する。 この3つの言語をつなげられる人が少ない。 だから、DXの提案をしても「それで何が変わるの?」となる。これは相手の理解力が低いからではない。むしろ普通だ。 伝える側が、技術を経営と現場の言葉に変換できていないことも多い。 DX人材に必要なのは、Pythonを書けることだけではない。 むしろ、現場課題を見抜く力、技術で解ける形にする力、上位者を動かすプレゼン力の方が重要になる場面が多い。
UdemyだけではDX人材は育たない
多くの企業は「DX人材を育成します」と言う。 研修を入れる。動画教材を配る。資格取得を促す。 だが、それだけでは足りない。 知識を得ることと、実際に業務を変えることはまったく違う。 DXは、学習コンテンツを見た人ではなく、現場で泥臭く課題を拾い、関係者を巻き込み、小さく試し、失敗しながら改善した人の中から育つ。 全員がプログラミングや機械学習をできる必要はない。 ただし、「デジタル技術でどんなことができるのか」を知っているだけで、現場の発想は大きく変わる。 逆に言えば、それを知らない組織は、いつまでも「今の業務を少し便利にする」発想から抜け出せない。
外注だけでは、本当のDXは難しい
DXを外注することも簡単ではない。 システム開発は外注できる。 画面も作れる。アプリも作れる。業務システムも作れる。 だが、業務の違和感、現場の暗黙知、部門間の利害、上司の判断基準、現場が本当に面倒だと思っていることまでは、外からは見えにくい。 だから、外注だけに任せると「システムはできたが、業務は変わらない」ということが起きる。 本当に必要なのは、社内にいる翻訳者だ。 現場を理解し、技術を理解し、経営に説明できる人。 この人材がいないままDXを進めても、かなりの確率で「導入して終わり」になる。
日本のDXが遅い理由は、ここにある
日本のデジタル化やDXが先進国の中で遅れていると言われることがある。 その理由は、技術が存在しないからではない。 活用する側の人間と組織が、技術の進化に追いついていないからだ。 AIの進化は速い。 クラウドも速い。 自動化ツールも速い。 しかし、組織の意思決定、現場の業務設計、人材育成、評価制度はそこまで速く変わらない。 この速度差こそが、日本企業のDXを止めている。
DXという言葉が減っても、課題は消えない
最近、「DX」という言葉を聞く機会は少し減ってきた気がする。 だが、課題が解決したわけではない。 むしろ、AIの登場によって差はさらに開きやすくなっている。 使える企業は、少人数でより大きな成果を出す。 使えない企業は、人手不足のまま、紙とExcelと属人業務に追われる。 結論、DXに関わる技術革新は本当にすごい。 しかし、まだ多くの企業では、それを活用する側の人間と組織が追いついていない。 日本企業に必要なのは、流行りのツールを入れることではない。 現場と技術と経営をつなぐ「翻訳者」を育てることだ。 DXの本当の勝負は、そこから始まる。